宿日直及びオンコールの労働時間性~断続的労働について~

病院クリニック・介護事業の法律

今回は、病院及び介護施設特有の労働形態について、法律的な解説します。

宿日直

医療機関の宿日直の態様は様々ですが、労働密度が低いものについては、労基法41条3号の断続的労働(以下、「断続的労働」といいます)として対応しているケースもあると考えられます。

上記の通り、断続的労働に該当した場合、労働時間の規制の適用除外となり、時間外労働および法定休日労働について、36協定の締結や割増賃金の支払いが不要となります。

さらに、宿日直においては、仮眠時間を取る体制となっていることが一般的です。

仮に、断続的労働に該当しない場合、仮眠時間 等を含めた全部の時間が労働時間として割増賃金の対象になるのか、仮眠時間等を除き、実際に業務をしている時間に対してだけ割増賃金を支払えば足りるのかが問題となります。

また、オン・コール体制を取っている医療機関も多いと考えられますが、待機している時間の労働時間性も問題となります。

断続的労働の異議

労基法は、労働時間、休憩および休日に関する規制の適用除外の類型を定めています(ただし、深夜労働に関する規制は適用されることに注意すべきです)。

労基法41条3号は、「監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの」(監視・断続的労働)を労働時間規制の適用除外として定めています。医療機関における宿日直は、断続的労働の該当性が問題となります。

「断続的労働」とは、休憩時間は少ないが手待時間の多いものです。断続的労働は、労働の労働密度が薄く、精神的肉体的負担も小さいため、労働時間規制の適用を除外されています。

宿日直勤務の断続的労働

断続的労働は、様々な態様がありますが、その中でも、通常の勤務に従事する労働者が付随的に断続的労働を行う宿日直勤務(以下「宿日直勤務」といいます)は特別なものとして取り扱われています。

たとえば断続的労働は、1日の中で通常の労働と断続的労働が混在していたり、日によって交互に従事したりする場合は該当しないとされていますが、宿日直勤務については、通常の勤務と宿日直勤務を交互に従事することが認められています

また、労働基準監督署長による許可手続も、宿日直勤務の断続的労働とその他の断続的労働とでは異なります。さらに、宿日直勤務の断続的労働については勤務の態様、手当、回数、 睡眠設備等について特別に基準が定められています。

医師、看護師等の宿日直勤務

上記に加えて、医師、看護師等の宿日直勤務については、その特性に鑑み、通達において別途許可基準が定められています。許可基 準の概要は次のとおりです。

  1. 勤務の態様 ・常態としてほとんど労働する必要がない勤務(病室の定時巡回、少数の要注意患者の検脈、検温等の特殊な措置を要しない軽度の、または短時間の業務を行うことを目的とするもの)であること
    ・原則として、通常の労働の継続は認められない
    ・救急医療等を行うことが稀であり、一般的にみて睡眠が充分とりうるものである
  2. 睡眠時間の確保等 ・宿直勤務については、相当の睡眠設備を設置していること
    ・夜間に充分な睡眠時間が確保されている
  3. 宿日直勤務の回数
    ・宿直勤務は、週1回、日直勤務は月1回を限度とする
  4. 宿日直勤務手当
    ・宿日直勤務手当は、職種毎に、宿日直勤務に就く労働者の賃 金の1人1日平均額の3分の1を下らない

そして、同通達は、宿日直勤務中に救急患者の対応等が頻繁に行われ、常態として昼間と同様の勤務に従事することとなる場合には、宿日直勤務の断続的労働として対応することはできないとしています。