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診療報酬の回収方法及び防止方法について弁護士が解説

2020.12.30 病院クリニック・介護事業者の法律
病院クリニック・介護事業の法律

診療報酬を払ってくれない患者には、どう対応する?

診療報酬を払ってくれない患者には、どう対応すれば良いでしょうか。

弊社にも、こういう相談は多いです。そこで今回は、診療報酬の回収方法について解説していきます!

診療報酬のプロセス

まずは、診療契約の相手方である患者に対して、次のような形で、ソフトに任意の支払いを求めるのが良いでしょう。

  • 電話
  • 個別訪問
  • 医療機関名義での督促状を出す

それでも支払いがない場合には、内容証明郵便にて、「お支払いいただけない場合には、訴訟等の法的手段を講じることとなりますので、あらかじめご了承ください。」等の強い表現を用いて通知を行うことが考えられます。この際には、弁護士名義で、通知文を送付するこことも考えられます。

以上のプロセスを経ても支払いがない場合には、支払督促や訴訟等の法的措置を取ることが考えられます。

他方で、未収金の回収に努めたにもかかわらず、回収できないときは、保険者(全国健康保険協会、健康保険組合等)に申請して保険者による滞納処分を行うことにより、回収を図ることが考えられます(国民健康保険法42条2項、健康保険法74条2項)。

消滅時効に注意

診療報酬支払請求権の消滅時効は、原則5年です。(2020年3月31日までの債権は、3年)

時効は、債権者である医療機関が権利行使することや債務者である患者等が債務承認することにより、時効期間がリセットされ、新たに時効期間のカウントがはじまります。

債務承認とは、時効の利益を受ける者(患者等)が、時効によって権利を失う者(医療機関)に対して、診療報酬支払請求権の存在を認めることです。

患者等から、未払診察報酬全額についての支払いを誓約書等の形で承認してもらうことや診療報酬の一部を支払ってもらうことにより、債務承認となり、当該診療報酬支払請求権の時効がリセットされます。

したがって、消滅時効の期限が迫っているような場合に、治療費の一部だけでも支払ってもらうことは、消滅時効を中断・更新するという点で意味があります。

患者からの支払い猶予の申込みも、債務承認となり、支払い猶予申込みの対象となる診療報酬支払請求権の消滅時効の進行をリセットします。

もっとも、診療報酬は弁済期ごとに、それぞれ別個独立の診療報酬支払請求権が発生すると考えられるので、ある弁済期の診療報酬に対する支払いや支払い猶予の申込みは、別の弁済期にある診療報酬の債務承認とはならず、当該別の弁済期にある診療報酬の消滅時効はリセットしない点に注意が必要です。

内容証明郵便にて支払いを促すことで、催告となり、時効期間を停止することができますが、6カ月以内に訴訟を提起するなど裁判上の請求をしなければ、時効をリセットする効力がないので注意が必要です。

支払督促という方法もある

支払督促とは、金銭請求について、簡易裁判所の裁判所書記官を通じて行う法的な請求です。

債務者である患者等が異議を申し立てないまま2週間経過すると、裁判所書記官は「仮執行宣言付支払督促」を発布し、債権者たる医療機関は、 これにより債務者たる患者等の財産に対して強制執行を行うことができます。

滞納処分の利用

保険医療機関としては、未払報酬支払請求権の回収作業と管理業務を善良な管理者としての注意義務をもって行っていたにもかかわらず、患者等が支払うべき一部負担金を支払わない場合には、保険者への請求により、未払いの一部負担金が保険者から保険医療機関に支払われることになります。

当然、保険者は、未払いの被保険者(患者等)に対して強制徴収権を行使し、未払いの一部負担金を徴収することになります。

この方法を利用することで、上記の支払督促等の法的措置を自ら行うことなく、保険医療機関は未払金の回収を図ることができます。

未払いを予防するために

自由診療の場合は滞納処分を利用することができないので、任意に診療報酬を支払わない患者から診療報酬を回収するには、最終的には訴訟等の法的手段を取る必要があります。しかし、弁護士費用などを含め少なくないコストがかかります。

また、保険診療の場合には、保険者に請求して滞納処分を利用できるにしても、本来不要な事務手続コストが発生することに変わりありません。したがって、重要なことは診療報酬の未払いを発生させない体制づくりになります。

具体的には、滞納履歴がある等のリスクのある患者等に対しては、あらかじめ支払条件を確認すること、入院にあたってはクレジットカードの利用を求めたり、デポジットを徴収することが考えられます。

また、支払遅滞が発生した場合には、支払計画を明記した念書を作成し、家族や近親者などを連帯保証人にする等の措置を講じることも考えられます。特に入院費用など診療報酬が高額となる場合には、事前に連帯保証人を付けることを検討された方が良いでしょう。

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