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病院クリニックにおける手術同意書の法的性質を弁護士が解説

2020.11.04 病院クリニック・介護事業者の法律
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病院クリニックにおける手術同意書とは

手術同意書とは、手術を受ける患者が医師の行う手術を受けることを承諾する意思を記載した書面です。

通常、手術には患者の身体的侵襲を伴いますので、民事上、患者から医師ら又は医療法人に対して不法行為に基づく損害賠償請求権が発生することになります。

手術同意書は、患者が手術を受けることについて同意する ことにより、身体的侵襲に伴い発生する損害賠償請求権を放棄するという法的性質を有します。

では、患者が手術同意書に署名押印した場合、いかなる場合でも、医師に対して損害賠償ができないことになるのでしょうか。

結論からいうと、患者が手術同意書に署名押印したとしても、 医師が負うことになる責任の一切が免除されるわけではありません。

あくまで、手術同意書は、病院が患者に対して手術内容を十分に説明し、 医療水準に従って過失がない手術をすべき医療契約上の債務を果たした場合、手術の結果が万一発生した不可抗力の事態に至ったとしても損害賠償をしないという趣旨の合意と解されると考えられます。

インフォームド・コンセントと手術同意書

手術同意書は、医師の診療契約上の説明義務(インフォームド・コンセ ント)が履行されたかの証拠になるものです。

医師は、判例上、診療契約の義務として医療方針について患者に対して、説明義務を負うと解されているものの、直接的に根拠となる明文の規定はなく、その方法や内容を詳細に定めた法規定はないため、インフォームド・ コンセントは、医師が口頭で行うこともできると解されています。

もっとも、治療の後で同意や説明の有無、内容(が十分であったか)が争いになることも想定されるため、あらかじめ文書にしておく方が望ましいといえます。

そのような意味でも、手術同意書は、医師の診療契約上の説明義務が履行されたかの証拠となるものといえます。

手術の際のインフォームド・コンセント

手術同意書に記載すべき内容、ひいては医師が患者に説明すべき内容と してどの程度が求められるでしょうか。

まず、原則として、医師は、医療行為を行うに際しての合理的裁量が認められます。

したがって、診療契約上要求される説明の内容も、その合理的裁量に基づいて当該医師が決定することができます。

そして、どの程度の説明が合理的裁量に基づく説明と評価できるかについては、原則として診療当時の医療水準が基準とされています。

例えば、説明が患者の意思決定を尊重してなされるものであることから、意思決定に関わる重要なものについては、詳しく説明することが要求されます。

また、重篤な結果が発生する可能性がある場合や、重篤ではなくとも頻度が高く患者の負担が大きいと考えられる場合には、説明する義務がある と考えられます。

さらに代替治療に関する説明義務の要否について、確立した療法と未確立の代替療法が存在する場合に、一般には未確立の代替療法について常に説明義務が生じるとはいえないとしながらも、患者が当該代替療法につい ての関心を表明し、代替療法の実施例が相当数あり、患者に代替療法への適応可能性が認められるなどの具体的事情から未確立の代替療法についての説明義務を認めた判例もあります。

また、「いかなる事故についても一切の異議申立てをしない」といった損害賠償請求権放棄の同意書は、公序良俗(民法 90条)に反し無効と判断されているものもあります。

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