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医療法人が事業承継を行う場合に問題となる事例を解説

2021.02.09 病院クリニック・介護事業者の法律
病院クリニック・介護事業の法律

医療法人の理事長の交代

医療法人には、役員として、原則理事三人以上、監事一人以上を置かなければならないこととされており(ただし、医師または歯科医師 が一人である診療所など一定の小規模な医療法人である場合など、都道府県知事の認可を受けた場合は理事は一人または二人でもよい)全ての理事により理事会が構成され、 理事会は理事長を選出することになっています。

また、理事のうち一名を理事長とし、理事長は原則として医師または歯科医師のうちから選出することとされています。

したがって、理事長を交代させる手続としては、理事会において、 元の理事長を任期満了または解任により退任させて、新しい理事長を選任することになります。

なお、役員の変更がある場合、医療法人は、 新役員の就任承諾書、履歴書等、必要書類を添えて、都道府県知事等 に遅滞なく役員変更届を提出する必要があります。

医療法人の事業承継の実際

(1)後継者の確保

後継者の確保は、中小企業と同様、医療法人においても同じ問題が存在します。

医療法人として長年の実績もあり、後継者が既に決まっているよう な医療法人であれば、社員総会において新理事となるべき者を理事に就任させ、理事会で当該理事を理事長に選任すれば、理事長の交代の手続は終了します。

しかし、地域に定着し、患者も多く、医療機関として実績が十分で も、後継者の医師がそのままこの実績を引き継げるかは問題です。実際の理事長(院長)の交代時期を見越して、事前に後継者を地域に認識してもらうことが必要です。

また、医師である現理事長の子が後継者になってくれるとは限りま せん。その子自身が病院や診療所を既に開業していたり、大病院の勤務医としての地位に固執したり、大学病院の研究に専念する希望を持っていたり、あるいは専門分野や標榜診療科が異なっていたりと、実際に事業を承継するためのハードルは、従来からの運営者の医師等が 考えている以上に高いものです。

その場合には、別の医師を探さなければなりませんが、地域密着型 の診療所等の場合には、早期に適切な人材を確保することは容易では ありません。

(2) 人材の引継ぎの問題

仮に、この問題が解決したとしても、当該医師と他の理事や勤務医、看護師その他の従業員との人的関係が良好でない場合には、事業承継は難航する場合があります。

事業承継に伴って勤務医や看護師が退職するような場合には、代わりの医師等を確保する必要がありますが、やはり人材の引継ぎができない場合には、人材確保において難航することが考えられます。

(3) 現理事長の退職慰労金等

理事長が交代するに際して現理事長が退職慰労金を受領することが多く、持分の定めがない法人を親族外の第三者へ承継する場合には、 退職慰労金が譲渡対価(の一部)の実体を有するとも言えます。

また、退職慰労金は受ける側にとっても課税上有利であり、医療法人にとっ て損金計上が可能なため、医療法人にも退職理事長にもメリットがあります。

ただし、「不相当に高額」な場合には損金処理は認められません。

不相当かどうかは、「当該役員のその内国法人の業務に従事 した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人で その事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等 に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認 められる金額を超える」かどうかで判断されます。

一般的には「役員の最終月額報酬 × 在任年数 × 功績倍率」で算定されています。

功績倍率は、裁判例等から3倍程度までが目安とされますが、あくまでも事業規模や退職の事情等に照らして判断さ れますので、3倍というのは一つの目途に過ぎないと言えます。

また、退職慰労金規程がない場合には、承継を見越してあらかじめ定款または退職慰労金規程を策定するなどの措置をしておくことが必 要です。

なお、現理事長が円滑な業務引継ぎ等のため一定期間非常勤等の形式で退任後も医師として在職するケースもあります。

税務当局に退職の実態がないと判断されると、税務上の退職慰労金の優遇措置を受け られなくなるおそれがありますので注意が必要です。

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